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第3回 投げた後に氷で冷やすのはなぜ?2010年08月30日

こんにちは、アスレティックトレーナーの西村典子です。今年の夏の甲子園大会は興南高校の春夏連覇で幕を閉じ、すべての高校が新チームとして活動を開始したことと思います。早いもので春の選抜大会出場をかけた秋の地区予選も始まります。甲子園へ続く公式戦、大舞台を目指して選手の皆さん、がんばってくださいね!
さて今回は投球とコンディショニングについて考えてみたいと思います。
甲子園大会でもよく投手交代の後に、投げ終わった投手が肩や肘などを氷などでアイシングしている姿を目にしたと思います。
なぜ投げ終わった後は氷で冷やすという習慣が一般的になったのでしょう?
投球後の肩や肘は、同じ動作を繰り返すことで関節や筋肉、靭帯などに投球ストレスが加わっています。自分の筋力や体力を超えて投げ続けると、時には肩や肘に炎症を起こして痛くなることがあります。このような痛み、腫れ、内出血や熱感などの炎症症状を抑えるために氷で冷やすという対応がとられるのです。氷で冷やすメリットとしては「炎症をこれ以上広げない」ことがあげられます。氷で冷やさずにそのままにしておくと、痛みのある部位のみならず周辺にまで炎症が広がってしまい、回復するまでに長い時間がかかってしまいます。また炎症を抑えることは痛みを軽減させることにもつながります。炎症を広げないことは、他の部位を守るために必要なコンディショニングなのです。
しかし氷で冷やすことにはデメリットもあります。その一つは「冷やした部位が固くなってしまう」こと。氷で冷やした直後は関節や筋肉などは動かしにくいと感じた選手がいるかもしれません。冷えた部位が通常の温度まで戻るのに十分な時間が必要となるため、しばらくは動きづらさを感じるのです。そしてもう一つ、「冷やしっぱなしでは回復は遅くなる」ということ。冷やすことは炎症を抑えますが、ケガなどからの回復に必要な血流も減少させてしまうのです。痛みなどの炎症が軽減する目安としては48~72時間(2、3日)といわれており、それ以降は患部を積極的に動かして温めるようにしていきます。ただし腫れがひどい場合や熱感、痛みが強い場合は温めると悪化してしまうこともあるので注意が必要です。
このようなデメリットがあるにも関わらず、氷で肩や肘などを冷やすことが習慣になっているのは「メリットがデメリットを上回る効果」が期待できるからなのです。また痛みなどの炎症症状への対応だけではなく、疲労回復を目的として氷で冷やす場合もあります。このときは通常よりも少し短い時間で冷やすようにします。
皆さんが投げた後に氷で冷やす場合はこれらのことに注意して行ってくださいね。

●冷やすものは出来る限り氷にしましょう(冷却材は凍傷になりやすいため)
●冷やす時間は20分を目安に、繰り返す場合は40分以上間をあけてから再度冷やしましょう
●痛みなどの炎症症状が強い場合は、一度ではなく何度か繰り返しましょう
●バンテージやアイシング用のサポーターがあれば圧迫・固定がより簡単に出来ます
●キューブ状の氷は出来るだけ平らにして、空気を抜くと密着度が増します
●ケガなどの場合は痛みが軽減する2、3日をめどに、患部を温めることへと移行します
(文=西村 典子)
次回、第3回公開は9月15日を予定しております。
- 西村 典子さん
- ■ 生年月日:1970年12月5日
- ■ 出身地:大阪府
- 奈良女子大学文学部教育学科体育学専攻卒。野球用品メーカーにて勤務後、トレーナーとして10年以上にわたり高校野球・大学野球の現場にたずさわる。野球現場での活動を通して自分たちで自分の体をマネジメントする「セルフコンディショニング」の重要性を感じ、チーム・選手・指導者にむけてスポーツ傷害予防や応急処置、トレーニング(ストレングス&コンディショニング)に関する教育啓蒙活動を行っている。
一般雑誌、専門誌、ネットなどでも取材・執筆活動中。また整形外科ドクターと野球の傷害予防に関する共同研究活動なども行っている(現在の研究テーマは手指血行障害について)。
現在、東海大学硬式野球部アスレティックトレーナーをはじめ、さまざまな高校野球部を担当中。 - ・日本体育協会公認アスレティックトレーナー
・NSCA公認ストレングス&コンディショニング・スペシャリスト(CSCS)
・NSCA公認パーソナルトレーナー(NSCA-CPT)
・日本スポーツ整形外科学会会員 等 - 講演依頼はこちら




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